アドラー心理学の特徴とは?5つの重要な考え方をわかりやすく解説

アドラー心理学の特徴とは?5つの重要な考え方

アドラー心理学について調べていると、

「目的論」

「劣等感」

「共同体感覚」

「課題の分離」

といった言葉をよく目にします。

けれど、それぞれの言葉だけを覚えても、

「結局、アドラー心理学ってどんな考え方なの?」

と感じてしまう人も多いのではないでしょうか。

アドラー心理学の特徴は、ひとつの理論だけで説明できるものではありません。

人間をどのように見るのか。

過去をどう捉えるのか。

他人とどう関わるのか。

そして、自分の人生をどう生きるのか。

それらがひとつにつながって、アドラー独自の人間観をつくっています。

この記事では、アドラー心理学を理解するうえで重要な考え方を5つに整理して、初心者にもわかりやすく紹介します。

単なる用語の暗記ではなく、

「この考え方は、自分の日常とどうつながるのか」

という視点から見ていきましょう。


アドラー心理学とは?

アドラー心理学とは、オーストリアの精神科医アルフレッド・アドラーによって創始された心理学です。

正式には『個人心理学(Individual Psychology)』と呼ばれています。

アドラーは、人間を過去の経験だけで説明するのではなく、

「その人が何を目指して生きているのか」

という目的にも注目しました。

また、人間を心と身体、意識と無意識のように細かく分けるのではなく、ひとつのまとまりを持った存在として捉えることを重視しました。

さらに、人間は一人では生きられず、家族や友人、学校、仕事、社会など、他者との関係のなかで生きていると考えます。

つまりアドラー心理学は、

「自分らしく生きること」と「他者とともに生きること」の両方を考える心理学

だと言えるでしょう。

では、その特徴を5つに分けて見ていきます。


アドラー心理学の5つの重要な考え方

1.目的論|「なぜ?」だけではなく「何のため?」と考える

アドラー心理学の大きな特徴のひとつが、目的論的な考え方です。

私たちは普段、

「昔失敗したから、挑戦できない」

「過去に傷ついたから、人を信用できない」

というように、現在の自分を過去の出来事から説明しがちです。

もちろん、過去の経験が現在に影響を与えることはあります。

しかしアドラーは、それだけでは人間の行動を十分に理解できないと考えました。

そこで注目したのが、

「その行動によって、何を実現しようとしているのか」

という視点です。

たとえば、

「失敗するのが怖くて、新しい仕事に挑戦できない」

という場合。

原因だけを見るなら、

「以前、失敗して恥をかいたから」

となるかもしれません。

一方で目的という視点から見ると、

「もう傷つかないために、挑戦しないという選択をしている」

とも考えられます。

すると、問いが変わります。

「なぜ自分はこうなってしまったのか」

ではなく、

「私は今、この行動によって何を守ろうとしているのだろう?」

と考えられるようになります。

目的論のおもしろさは、過去を否定することではありません。

過去だけで未来が決まるわけではないと考えることで、これからの行動に目を向けられることにあります。


2.全体論|人間をバラバラに分けて考えない

アドラー心理学では、人間をひとつの全体として捉えることを重視します。

たとえば、

「頭ではやりたいと思っているのに、心が邪魔をする」

「本当の自分はこうしたいけれど、身体が動かない」

という言い方をすることがあります。

けれど、アドラー心理学では、

思考。

感情。

身体。

行動。

これらを完全に別々のものとして見るのではなく、

すべてがひとりの人間の中でつながっている

と考えます。

たとえば「人前で話したくない」という人が、

緊張する。

声が震える。

「失敗する」と考える。

発表を避ける。

という行動をしていたとしても、それらをバラバラの問題として見るのではありません。

その人全体が、

「人前で失敗しないようにする」

というひとつの方向へ向かっている可能性を考えます。

この見方をすると、

「自分の心が自分を邪魔している」

という考え方から少し離れられます。

自分自身の中で何かが戦っているのではなく、

「私は全体として、今どんな方向へ向かっているのだろう?」

と考えられるようになります。


3.劣等感|「足りない」という感覚は成長にもつながる

アドラーといえば、劣等感という言葉を思い浮かべる人も多いでしょう。

劣等感というと、

「自分は他人より劣っている」

「自分には価値がない」

というネガティブなものに感じられます。

しかしアドラーは、劣等感そのものを悪いものとは考えませんでした。

私たちは、

「もっと上手になりたい」

「もっと成長したい」

「今よりできるようになりたい」

と感じます。

なぜなら、

今の自分と、こうなりたい自分との間に差を感じるからです。

この「まだ足りない」という感覚は、成長のきっかけにもなります。

問題になるのは、劣等感を理由に、

「どうせ自分には無理だ」

と諦めてしまうこと。

あるいは、

「自分のほうが優れている」

と他人より上に立つことで、自分の価値を証明しようとすることです。

アドラー心理学では、

劣等感をなくすことよりも、それをどの方向へ使うか

が大切だと考えます。

誰かに勝つためではなく、

昨日の自分より少し前へ進むために使う。

そう考えると、劣等感の見え方も少し変わります。


4.社会統合論|人間は他者との関係の中で生きている

アドラー心理学には、

「他人のことは気にしなくていい」

「自分の好きなように生きればいい」

というイメージを持たれることがあります。

しかし、実際にはその逆とも言えます。

アドラーは、人間を社会的な存在として捉えました。

私たちは、

家族。

友人。

恋人。

学校。

職場。

地域。

社会。

さまざまな人との関係のなかで生きています。

つまり、自分だけを切り離して人間を理解することはできません。

人間関係で悩んでいるときも、

「相手が悪い」

「自分が悪い」

だけではなく、

「この関係のなかで、私はどう振る舞っているのだろう?」

と見ることができます。

ここから、アドラー心理学で重要な共同体感覚という考え方につながっていきます。

自分には居場所がある。

人とつながっている。

自分も誰かの役に立つことができる。

こうした感覚を持ちながら生きることを、アドラーは重視しました。


5.主体性|人生の意味づけを選ぶのは自分

アドラー心理学には、人間を受け身の存在として見ないという特徴があります。

同じ出来事を経験しても、人によって受け取り方は違います。

たとえば、仕事で失敗したとします。

ある人は、

「自分には才能がない」

と思うかもしれません。

別の人は、

「次に改善すべきところがわかった」

と思うかもしれません。

起こった出来事自体は同じです。

しかし、

その出来事にどのような意味を与えるか

は同じとは限りません。

アドラー心理学では、人間は単純に環境によって決められる存在ではなく、自分なりの意味づけをしながら生きていると考えます。

だからこそ、

「過去にこんなことがあったから、自分は一生こうだ」

と決めつける必要もありません。

過去そのものは変えられません。

しかし、

過去をどのように捉え、これからどう生きるかについては考え直すことができます。

ここにアドラー心理学の主体的な人間観があります。


5つの特徴は、すべてつながっている

ここまで、

  1. 目的論

  2. 全体論

  3. 劣等感

  4. 社会統合論

  5. 主体性

という5つの考え方を紹介しました。

これらは、それぞれ独立した理論ではありません。

すべてがつながっています。

人間をひとつの全体として見る。

過去だけではなく、これから向かう目的を見る。

自分の不足を、成長する力へ変えていく。

他者との関係のなかで自分を見る。

そして、自分の人生にどんな意味を与えるかを考える。

そうして見えてくるのが、

「人は、今この瞬間からどう生きるのかを考えることができる」

というアドラーの人間観です。


「課題の分離」はアドラー心理学の特徴ではないの?

アドラー心理学について調べると、よく登場するのが「課題の分離」という言葉です。

「これは誰の課題なのかを考える」

という考え方で、日本では非常によく知られています。

たとえば、

自分が相手に丁寧に接することは、自分の課題。

それを相手がどう評価するかは、相手の課題。

というように整理します。

これは人間関係を考えるうえで役立つ視点です。

ただし、ここで注意したいことがあります。

課題を分けることは、

「他人には一切関わらない」

という意味ではありません。

むしろ、自分と相手の責任や選択を尊重したうえで、

「では、どう協力できるだろう?」

と考えるためのものです。

アドラー心理学の中心には、他者とのつながりや協力があります。

課題の分離だけを切り取って、

「自分のことだけ考えればいい」

と理解すると、アドラーの思想から離れてしまいます。


アドラー心理学を日常でどう使えばいい?

理論として理解しても、

「実生活でどう使えばいいの?」

と思うかもしれません。

そんなときは、悩んだ場面で問いをひとつ変えてみるのがおすすめです。

たとえば、

「なんで私はこんな性格なんだろう」

と思ったら、

「私は今、何を避けようとしているのだろう?」

と考えてみる。

誰かと比べて落ち込んだら、

「その人より上になることではなく、私はどう成長したいのだろう?」

と考えてみる。

人間関係で悩んだら、

「これは誰の課題だろう?」

と整理してみる。

失敗を引きずっているなら、

「この経験を、これからどんな意味に変えていきたいだろう?」

と考えてみる。

すぐに答えが出なくても構いません。

アドラー心理学を日常に取り入れるというのは、

正解を覚えることではなく、

自分に投げかける問いを変えてみること

なのかもしれません。


アドラー心理学が現代にも響く理由

アドラーが生きたのは、今から100年以上前です。

当然、当時にはSNSもスマートフォンもありませんでした。

それでも、アドラーが考えた問題は驚くほど現代的です。

他人と自分を比べてしまう。

人からどう思われているか気になる。

自分に自信が持てない。

過去の失敗に縛られてしまう。

人間関係に疲れる。

自分が何をしたいのかわからなくなる。

環境は変わっても、

人間が他者との関係のなかで生きていることは変わっていません。

だからこそ、

「他人はどう思うだろう?」

だけではなく、

「私はどう生きたいのだろう?」

と問い直すアドラーの思想は、今の私たちにも響くのではないでしょうか。


まとめ|アドラー心理学は「生き方を見る視点」

アドラー心理学の特徴を5つに整理すると、

目的論
「なぜこうなったのか」だけでなく、「何を目指しているのか」を見る。

全体論
心や身体をバラバラにせず、一人の人間を全体として見る。

劣等感
「足りない」という感覚を、成長につながる力として考える。

社会統合論
人間を、他者や社会との関係から切り離さずに考える。

主体性
過去や環境だけに決められるのではなく、自分なりに人生を意味づけて生きる。

こうして見ると、アドラー心理学は単なる「悩みを解決するテクニック」ではありません。

その根底にあるのは、

「人間とは、どのような存在なのか」

という問いです。

そして、その問いは最終的に、

「私はこれから、どう生きたいのか」

という私たち自身の問いへつながっていきます。

哲学や心理学のおもしろさは、誰かの答えを覚えることだけではありません。

昔の思想家が投げかけた問いを、自分の日常に持ち帰ってみること。

人間関係に悩んだとき。

自分と誰かを比べてしまったとき。

過去の出来事から前に進めなくなったとき。

そんなときに、

「アドラーなら、この状況をどう見るだろう?」

と考えてみる。

それだけでも、いつもとは少し違う景色が見えてくるかもしれません。

哲学を学ぶことを、もっと日常に。

アドラー心理学の全体像が見えてきたら、次は「目的論」「劣等感」「共同体感覚」など、それぞれの考え方をひとつずつ深く学んでみてください。

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